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2012/08/07

The public has a rather ambivalent attitude toward science.

今年の8月6日、つまり昨日は広島県の福山で過ごした。ホテルに着き、テレビをつけて荷物を広げながら見ていた。

NHK広島放送局の番組は、原爆関連のものばかりだった。

そして、当然ながら、というべきか、福島の原発事故との関連を論じたものも多かったし、実際、昨日の広島市内は反原発のデモ行進も盛んに行われたようだった。

上のツイートで述べた『ヒロシマ あくなき“未解明”との闘い』という番組では、被爆二世の人々に急性白血病の症状が出る可能性がきわめて高い、つまり、「被爆の影響が遺伝する」可能性について論じられた。これとて、福島で被爆した人々からすると切実な問題だし、今後、同様に原発事故で被曝する可能性があるぼくたちすべての人間にも他人事ではないのだ。

今すぐに「原発を即刻停止せよ」と主張することは、現実的には難しいかもしれない。それに、停止すれば安心、というものでもない。問題となる放射性物質は残ったままだ。

ただ、そもそも原発なるものを日本に作った経緯自体が胡散臭く(実戦による世界唯一の被爆国であり、「非核三原則」を唱えているにもかかわらず、結局、核の力を利用することじたい、矛盾している)、当時、原発を推進した正力松太郎をはじめ、アメリカの思惑に利用された自民党政権(無論、それによって莫大な利益を庇護を得たであろうが)や、利権に群がる地方自治体・有象無象の怪しげな輩がよってたかって国民をなだめすかし、時に恐喝し、時に金をちらつかせて作ったものである以上、そもそも初めから問題が山積みだったのだ。

確かに、科学的に原発の安全性や危険性について考えることは重要である。Stephen Hawkingが"Black Holes and Baby Universes and Other Essays"(1993)の中で次のように述べている。

"If we accept that we cannot prevent science and technology from changing our world, we can at least try to ensure that the changes they make are in the right directions. In a democratic society, this means that the public needs to have a basic understanding of science, so that it can make informed decisions and not leave them in the hands of experts. At the moment, the public has a rather ambivalent attitude toward science. It has come to expect the steady increase in the standard of living that new developments in science and technology have brought to continue, but it also distrusts science because it doesn't understand it."
(もし私たちが、科学技術が世界を変えることを止められない、ということを受け入れるとしても、私たちは少なくとも、科学技術が生み出す変化が正しい方向に確実に向かうようにさせようとすることはできる。民主主義社会において、これが意味するのは、大衆が科学についての基本的な理解を持たねばならない、ということだ。それは、大衆が学識のある決断を下し、専門家の手に決断を委ねないようにするためである。いま、大衆は、科学に対してかなり矛盾した考えを持っている。大衆は、科学技術の新たな発展がもたらす生活水準の安定した向上が続くことを期待するようになってきたが、同時に、科学のことを理解していないから、科学に対する不信感を抱いている。)

「大衆は科学を理解していないがゆえに、科学に不信感を抱く。」

これは確かにその通りだ。

だが、科学を理解すればその不信感が払拭されるわけではない。その意味で、Hawkingの考えはあまりに楽天的すぎる。

むしろ、Bertrand Russellが"Authority and the Individual"(1949)で述べた見解の方が現実的だ。

"It would not be surprising if, in the present day, a powerful anti-scientific movement were to arise as a result of the dangers to human life that are resulting from atom bombs and may result from bacteriological warfare. But whatever people may feel about these horrors, they dare not turn against the men of science so long as war is at all probable, because if one side is equipped with scientists and the other not, scientific side would almost certainly win."
(もし、現在、原子爆弾が原因の、また、細菌兵器による戦争が原因となりうる、人類の生命への脅威の結果として、力強い反科学運動が行われたとしても、驚くことはないだろう。しかし、人々がこれらの脅威について何を感じているとしても、そもそも戦争の可能性がある限り、彼らがあえて科学者の敵に回るようなことはない。というのは、もし、一方に科学者がいて、もう一方にはいないとすれば、科学者のいる側がほぼ確実に勝つであろうからだ。)

"Science, in so far as it consists of knowledge, must be regarded as having value, but in so far as it consists of technique the question whether it is to be praised or blamed depends upon the use that is made of the technique. In itself it is neutral, neither good nor bad, and any ultimate view that we may have about what gives value to this or that must come from some other source than science."
(科学は、知識から成り立つ限り、価値があるとみなされて然るべきものだ。しかし、それが技術から成り立つ限りでは、科学が賞賛されるべきか非難されるべきかという問いは、その技術の利用のされ方によって左右される。科学はそれ自体中立的であり、良くも悪くもない。そして、あれこれのことに価値を与えるものについて私たちが抱くかもしれない最終的な考えは、科学以外の原因から生じるに違いないのだ。)

科学を盲信することはできない。科学では、毎年新たな発見がなされていて、以前は正しかったことが今では間違いである、ということもある。

だが、科学や、それを活用した技術についての評価は、Russellが言うとおり、「技術の利用のされ方」によって決まるものであり、「科学以外の原因」が問題なのだ。

だから、原発批判も、原子力の技術そのものへの批判ではなく、それを推進することで利益を得てきたエスタブリッシュメントや、危険性を隠蔽し、ひたすら安全性のみを強調することで利潤を追求してきた東電をはじめとする企業の姿勢に対する批判なのだ。

「一旦、うやむやに動かしてしまえばどうにかなる。数十年後のことなんて、知ったことか」と考えるエスタブリッシュメント(そりゃそうだ、とりあえず自分が生きている間「だけ」どうにかなればいいのだから。だから、原発問題は世代間闘争なのだ)や、原発から生まれる大量の利権をむさぼる企業・暴力団・自治体の思惑は、この数十年間、まんまと成功してきた。

今回はたまたま福島での事故があったがゆえに、大きなムーブメントになってはいるが、もしあの事故が無かったら「ああ、無事だったね、よかったね」で済んでしまっていたはずだ(東海村の臨界事故で被爆した死者が出ているにもかかわらず、それ以降もなんだかんだいって原発は動き続けてきたのだから)。

昨日、原爆についての番組を見ながら、そんなことを考えていた。

そして、今朝のテレビでは何事もなかったかのように、オリンピックの熱狂が報じられていた。

ああ、日本は平和なんだ。たまたま、その平和を包む薄い薄い膜がびりっと割けただけで、ぼくたちは、じぶんを包んでいるその薄い膜が破れるなんて夢にも思っていないのだ。

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