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2012/07/23

On knowledge and learning something by heart.

今日ツイートした内容のまとめ。

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【1】アルゼンチンの作家、ホルヘ・ルイス・ボルヘスの著書・『伝奇集』に登場する、フネスという男がいる。フネスは卓越した記憶力を持ち、見たものをすべてそのまま暗記する。本を一冊、瞬時に丸暗記するのもお手のもの。しかも、どんな言語で書かれていてもすぐに覚えてしまう。

【2】だが、彼が何かを覚える場合、それは文字通り「丸暗記」しているだけで、たとえば外国語の本を覚えたからといって、その言語を理解して使いこなせるというわけではないのだ。

【3】おまけに彼は、あらゆる動きをパラパラ漫画の一枚一枚のように別々に覚えてしまう。正面を向いていた犬がちょっと目を離した隙に横を向いたとしたら、彼にはそれが別々の犬として記憶されてしまうのだ。

【4】フネスが実在の人物なのか、架空の人物なのかはわからないが、見たものを見たまま記憶してしまうサヴァン症候群という症状も現実的にはある(画家の山下清がそうだったと思われる)から、ひょっとしたら誰かをモデルにしてボルヘスが創作したのかもしれない。

【5】受験生からすると、フネスのこの能力は羨ましいかもしれない。だが、すべてを丸暗記する能力を持っていたところで、大学入試に合格するとは思えない。そこには「思考する」というプロセスが欠落しているからだ。丸暗記した知識だけを持っていても問題は解けないのである。

【6】辞書を丸一冊暗記したからといって英語ができるようにはならない。用語集を丸暗記したからといって地歴公民ができるようにはならない。元素記号や化学式を丸暗記したからいって化学ができるようにはならない。

【7】ただしぼくは、丸暗記を全面的に否定するつもりもない。英語なら動詞の活用や単語の綴りなどはある程度丸暗記せざるを得ない(ラテン語よりはマシだがw)。日本史ならば人名の漢字を無条件で覚えねばならない。問題は、知識を「使える」かたちで覚えているかどうかなのだ。

【8】同時に、ものを効率的に覚える工夫も必要だ。それは「なぜなのか」を理解することだ。単語の意味を覚えるのであれば、語根・接頭辞・接尾辞を使って分解しながら覚えたり、コア・イメージ(onは「接触」、overは「上一面」など)を使って覚えるのが効果的だ。

【9】たとえばchargeという単語の意味を説明するのに、ぼくはその語源のcar(車に積む)から説明する。「車に重荷を載せる」から「料金・請求(金銭的負担)、充電する(電気的負荷)、責任・担当(精神的負担)」などの意味が生じる、と。

【10】問題なのは「全て」のことを理屈抜きにとにかく丸暗記することだ。なお、「全てを丸暗記するのは良くない(というより無理w)」と言っているだけであって、「知識はいらない」とは一言も言っていないということに注意してほしい。むしろ、知識は貪欲に吸収すべきである。

【11】「丸暗記ではダメ」と言うと「知識は不要」とか「丸暗記は〈絶対悪〉」と曲解する受験生が多い。知識は必要だし、場合によっては無条件で丸暗記せねばならない。大切なのはその知識を「使える」かたちで定着させることに他ならない。そしてその工夫をするのがぼくらの仕事なのだ。

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