« Today's recipe. | トップページ | Pay before complaining. »

2011/07/13

What are you up to?

社会学者の佐藤俊樹さんが1996年に『ノイマンの夢・近代の欲望』(講談社選書メチエ)で指摘したことだが、情報化社会なるものは、そうした社会が到来するぞと煽ることによって金儲けをすることができる人々の欲望の産物に他ならない。

だから、情報化社会などというものは、常に〈未来予想図〉に過ぎず、いつまで経ってもそれがリアルに実現される日は来ない。まるで、暑い日の道路にできる「逃げ水」のようなもので、追いついたと思ったら消えて、また少し前方に姿を変えて存在しているのだ。

確かに、技術そのものは進化した。だが、佐藤さんが指摘したように、技術が社会の在り方を変えるのではなく、社会の在り方(欲望)が技術を変えるのだ。

だから、情報化社会という実体の無い〈未来予想図〉を拠り所にした「情報教育」も、結局のところ「情報〈技術〉教育」に留まらざるを得ない。

要するに、何のために使うのかもわからないのに高価な情報機器だけ買い揃えても、結局、税金の無駄遣いに過ぎず、情報産業のいい食い物になるだけなのだ。

もちろん、電子黒板やらパソコンやらを使った授業をすべて否定するつもりはない。だが、教室でいくら綺麗な画面を見せられたところで、それは単なる「技術自慢」に過ぎないことの方が多いのではないか。

生徒さんが自宅で復習したり、学校外にいるときにいつでもその情報を共有できるような仕組みがなければ、「綺麗な映像でしたね」で終わってしまうのだ。

==========
ICTで指導できる教員は6割…文科省調査
(7/13 21:00 読売新聞)

パソコンや電子黒板などのICT(情報通信技術)を使って授業ができる教員は、全体の6割にとどまることが文部科学省の調査で13日、わかった。昨年度にICTの研修を受けた教員は2割で、同省では各学校や教育委員会に研修実施を呼びかけている。

東日本大震災のため回答できなかった岩手、宮城、福島県の373校を除く、全国の公立小中高校計約3万5600校の教員約87万人を対象に今年3月1日時点の状況を尋ねた。都道府県別で授業中にICTを使って指導ができると答えた教員の割合は、上位の三重、愛媛県が8割を超えた一方、下位の島根、滋賀など19都府県は5割台にとどまった。

同省では、子供の情報教育充実などを目的に、学校へのICT配備を進めている。電子黒板の学校配備数は6万474台となり、昨年3月末時点から4066台増えた。
==========

…で、これでいったい何を目指しているのか?

もちろん、新しい道具を使いこなせるに越したことはない。だが、勉強とはそもそも、非常にプリミティブな行為である。絶え間なく反復したり、口や手を動かして、学んだことを血肉化しなければならないのだから、学校にいくら最先端の技術が導入されても、それが果たして本当に生徒さんたちにとって役に立つものなのかどうか、はなはだ疑問に思う。

SF漫画じゃないけれど、学んだことをマイクロチップか何かにして脳内にでも埋め込めるようになれば別だが(笑)、そうでない限り、学んだことを定着させる行為は、これまでのプリミティブな方法を継続するしかないのだ。

これは、以前に書いた電子辞書の問題とも共通している。電子辞書のおかげで、「調べる」というプロセスは格段に簡略化されたが、「覚える」ことについては、下手をすると退化した可能性がある。道具も使いようである。


追記 ふと思い立って検索したら、『ノイマンの夢・近代の欲望』は、昨年、河出文庫から増補版が出されていたので、早速、アマゾンで注文した。

受験生や大学生の皆さん!「情報化社会」について学んだり、小論文を書く際には、これは外せない一冊です。ぜひご一読を。

『社会は情報化の夢を見る---[新世紀版]ノイマンの夢・近代の欲望 (河出文庫)』
http://www.amazon.co.jp/gp/aw/d/4309410391/ref=mem_taf_books_a

« Today's recipe. | トップページ | Pay before complaining. »

「日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« Today's recipe. | トップページ | Pay before complaining. »